後腹膜腔の手術と腹腔鏡手術

泌尿器科医の東原英二医師(現杏林大学医学部教授)は、外科ではじめて胆囊摘除が可能に なつてすぐにこの技術を泌尿器科へ応用することを考えました。しかし、胆囊に比べて腎臓や副 腎は、関与する血管も太く、また周囲にさまざまな臓器があり、はるかに難しい手術です。

まず最初の段階として実験用ブタで手術を行いました。ブタはヒトと臓器の位置関係が近いために、新しい外科技術はまずブタで確かめられることが多いのです。ただし、からだの 大きなブタに麻酔をかけることはかなり難しいのも事実。動物実験とはいえ、人間の手術室 とほぼ同じ環境で、麻酔医もいて、手術を行います。

しかし、その後の腹腔鏡手術開発と、実際に安全に手術を行うための道のりはかならずし も平坦ではありませんでした。

このような状況は、エベレストのような高山登山が、適切なルートの開発と軽量で優れた 装備の登場でより安全にできるようになつたことと、よく似ています。同行するのは、患者 さんと医師と高度な医療技術です。時間が短ければ患者さんには負担が少ないのですが、そ のためには技術もさることながら、それをいかす優れた機器類が必要で、それらがあいまつ て登頂成功となるのです。ルートの選び方も、大切な点です。

メリットとデメリットを考慮したのち、どのルートで行くかを決めた後は、熟練した技術 と進化した機器類を駆使して、登頂に挑みます。

後腹膜腔の手術では静脈性の細かい出血が多く、電気メスの処理では不十分で止血クリッ プを多用する必要があり、手術に時間がかかるのが難点でした。当時は小さい腫瘍での副腎 摘除術でも六、七時間かかることはざらでした。

止血をコントロールし、手術を安全にかつ手術時間を短縮することを目的とした腹腔鏡手 術のための手術法の開発もすすみ、現在は、これらの機器を積極的に取り入れて、より安全で 確かな手術が行われるようになっています。また腹腔鏡手術の開発普及に貢献する医師が集 まる日本の学会では、この手術を安全に行、っための認定制度を、世界に先駆けて設けました。

私の勤務している帝京大学病院では、オリンパス社製の、手術中に曇りがなく画期的な視 野が得られる内視鏡システムを導入し、安全性を高めた手術を行っています。二〇〇三年度 より鏡視下手術を導入し、がんの大きさなどにより術式の選択は違ってきますが、現在、副 腎手術はほぼ一〇〇%、腎がん患者さんの約七割は鏡視下手術を行っています。

また前立腺がんや膀胱がんにも鏡視下手術を行っています。腹腔鏡手術は、すでにアクロ バット的な手術ではなく、これまでの泌尿器手術をより負担が少なく、より安全に、かつよ り正確に行うことができるようになったのです。

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